公開: 2021年4月25日
更新: 2021年5月16日
終身雇用制によって、日本企業に所属している正社員には、担当する業務の遂行に必要な専門的な知識の他に、所属する企業組織に特有な企業の風土や企業の歴史に関する知識、さらに日本社会で一般に通用している慣習や倫理観など、欧米の企業とは比較にならないほど広い知識を持つことを要求される。日本社会では、業務に関連する専門的な知識よりも、企業組織にメンバーとして所属する一員として知らなければならない知識の方が、圧倒的に多いのが現実である。
それは、終身雇用によって、人生のほとんどを特定の企業組織の一員として生きなければならないからである。つまり、社員が従事しなければならない仕事は、組織での経験が長くなると、配置転換や昇進によって変化するからである。社員が持たなければならない知識は、担当する職務の専門性や、職位によって変化するからである。西洋型の組織では、担当する職務・職位に必要な知識を持つ者が、その任務を担当することになっているが、日本社会の終身雇用制では、その任務に着任してから、必要な知識を学ぶ。それらの知識は、一般的に組織に固有な知識が多く、普遍化された知識として大学等で教授することが難しいからである。